小児神経外来での遠隔医療活用

【医療×ICT. Aug. 2019】

Dayal, Parul, et al. "Hospital Utilization Among Rural Children Served by Pediatric Neurology Telemedicine Clinics."JAMA network open 2.8 (2019): e199364-e199364.

P: 2009年-2017年の期間、University of California Davis Children’s Hospital (UCDCH: カリフォルニア大学デイビス校の小児病院)の小児神経外来を遠隔医療もしくは対面で受診歴のある18歳以下の小児患者4,169名
E: 遠隔医療群 (患者の居住地近くのプライマリーケア医と遠隔でUCDCHの小児神経の医師をつなぐ): 378名
C: 対面診察群 (UCDCHの外来を受診): 3,791名
O: 救急外来受診もしくは入院

結果のまとめ

・遠隔医療群は対面診察群に比べ、よりUCDCHから遠くに住み (平均所要時間156分 vs 48分, p値 <.001)、より平均世帯年収が低かった (42,600ドル vs 69,300ドル, p値 <.001)。
・両群で慢性疾患の有無の割合に統計学的有意差はなかった (遠隔医療群 83.9% vs 対面診察群 88.8%)。
・遠隔医療群は対面診察群に比べ、観察期間における救急外来受診もしくは入院が有意に少なく、その差異は社会的、臨床的な背景を調整した上でも有意だった (あらゆる病名での救急外来受診もしくは入院: adjusted incidence rate ratio [aIRR] 0.57 [95% confidence interval [CI]: 0.38-0.88] , 神経疾患に関する病名での救急外来受診もしくは入院: aIRR 0.60 [95% CI, 0.36-0.99])。
・神経外来までの所要時間でマッチングさせた場合も、遠隔医療群は対面診察群に比べ、観察期間における救急外来受診もしくは入院が有意に少なかった (あらゆる病名での救急外来受診もしくは入院: aIRR 0.19 [95%CI 0.04-0.83], 神経疾患に関する病名での救急外来受診もしくは入院: aIRR 0.14 [95% CI, 0.02-0.82])。
・筆者は今回の結果から、専門外来から距離のある地域でも、遠隔医療により小児神経の専門を持った医師へのアクセスが簡便になり、かつ地域の医師との連携強化につながっていると述べている。その上で遠隔医療がコストの高い病院受診の削減に繋がる可能性があると結論付けている。

原文へのリンク

Naoya Hashimoto Written by:

小児科医、公衆衛生修士、株式会社Kids Public 代表取締役。2009年 日本大学医学部卒。聖路加国際病院にて初期研修。国立成育医療研究センターにて小児科研修。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 修士課程修了。