正期産児への臍帯遅延結紮

【OBGYN. Apr 2019】

Yang, Sophia, et al. "Association of a Delayed Cord-Clamping Protocol With Hyperbilirubinemia in Term Neonates." Obstetrics & Gynecology 133.4 (2019): 754-761.

P: 米国カリフォルニア大学 アーヴァイン・メディカル・センターにて18歳以上の妊婦から産まれた正期産児424名 (後方視的コホート研究)
E: 全例への臍帯遅延結紮プロトコル導入後に産まれた児 (211名、2016年10-12月、介入群)
C: プロトコル導入前に産まれた児 (213名、2015年10-12月、対照群)
O: 経皮ビリルビン最高値

※臍帯遅延結紮プロトコル:全ての週数において、分娩後60秒間経過してから臍帯結紮を行う。出生児の状態が不安定な場合や、母体が全身麻酔下の状態である場合などは除外された。

結果のまとめ

・プロトコルのアドヒアランスは87.8%だった。
・副次アウトカムとして、経皮ビリルビン初期値、血清ビリルビン値、静脈採血実施数、臨床的に黄疸と診断された率、光線療法実施率を評価した。
・介入群で、平均経皮ビリルビン最高値が有意に高かった (10.0 ± 3.4 mg/dL vs 8.4 ± 2.7 mg/dL, P<0.01)。
・介入群で、臨床的に黄疸と診断された率 (27.2% vs 16.6%; odds ratio [以下OR] 1.88; 95% confidencial interval [以下95% CI] 1.17–3.01) と静脈採血実施 (43.7% vs 29.4%; OR 1.86; 95% CI 1.25–2.78) が有意に多かった。
・一方で、血清ビリルビン最高値の平均 (9.7 ± 3.0 mg/dL vs 9.1 ± 3.1 mg/dL, P=0.17) と光線療法実施率 (5.2% vs 6.6%, OR 1.28; 95% CI 0.57–2.89) は両群で有意な差がなかった 。
・著者らは、本研究によって、ルーチンな臍帯遅延結紮はコストの増加に繋がることが示唆され、前方視的な多施設共同研究で、長期的評価や外来コスト、臨床的アウトカムまで含めた検証が遅延結紮推奨の前に必要だと結論づけている。

原文へのリンク

Daisuke Shigemi Written by:

産婦人科専門医、公衆衛生学修士。 株式会社Kids Publicの産婦人科医師統括部として産婦人科オンラインの運営に携わっている。また、東京大学大学院の博士課程に在籍しながら産科病院での臨床にも従事している。 初期研修を日本赤十字社医療センターで行い、3年目に日本医科大学産婦人科学教室に入局。卒後8年目に退局。