遠隔医療による経口妊娠中絶薬の処方

【医療×ICT. Nov 2018】

Endler, Margit, et al. "Safety and acceptability of medical abortion through telemedicine after 9 weeks of gestation: a population‐based cohort study." BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology 126.5 (2019): 609-618.

P: ポーランドで2016年6月-12月にWomen on Webという遠隔医療サービスを通して経口妊娠中絶薬による妊娠中絶を行った615名の女性
E: 妊娠9週以前に、遠隔医療を利用し郵送で経口妊娠中絶薬の処方を受け、妊娠中絶を行った女性
C: 妊娠9週より後に上記と同様の方法で妊娠中絶を行った女性
O: 中絶当日もしくは1日以内の医療機関受診、重篤な出血、想像以上の痛みと出血、低い満足度

※Women on Webとは、オランダを本拠地とする組織で、安全ではない方法での中絶を減らすことを目的に、遠隔医療での経口妊娠中絶薬の処方を行っている。
(参考URL: https://www.womenonweb.org/ )

結果のまとめ

・期間中にWomen on Webに連絡のあったポーランド国内の1220名の女性のうち、経口妊娠中絶薬の内服が確認され、薬剤の郵送から5週間後にオンラインフォームもしくはemailによってアウトカム評価を行うことができた615名を解析対象とした。
・妊娠9週以前に中絶を行った427名の女性の年齢の中央値は28歳 (年齢幅 16-56歳)で、妊娠9週より後の中絶を行った188名では、26歳 (年齢幅 16-45歳)であった。
・遠隔医療による中絶当日もしくは1日以内に、中絶に関わる出血や腹痛への心配を理由に医療機関受診をした利用者は、妊娠9週以前に比べ妊娠9週より後の中絶の方が優位に多かった。 (3.3% vs 11.7%, adjusted odds ratios 3.82, 95% confidence interval 1.90-7.69)
・重篤な出血、想像以上の痛みと出血、低い満足度に関しては、両群で統計学的に有意な差はなかった。
・筆者らは、WHOが定める経口妊娠中絶薬の適応である妊娠9週を超えた場合、遠隔医療を通した経口妊娠中絶薬内服後の医療的介入頻度が増加した一方で利用者の満足度に差がなかったと述べている。このことから、妊娠9週より後であっても遠隔医療の適応となりうる一方で、経口妊娠中絶薬の量の調整や、情報提供の工夫の必要があると述べている。

原文へのリンク

Naoya Hashimoto Written by:

小児科医、公衆衛生修士、株式会社Kids Public 代表取締役。2009年 日本大学医学部卒。聖路加国際病院にて初期研修。国立成育医療研究センターにて小児科研修。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 修士課程修了。