米国救急外来における抗菌薬事情

【PEDIATRICS. Feb 2019】

Poole, Nicole M., et al. "Antibiotic Prescribing for Children in United States Emergency Departments: 2009–2014." Pediatrics 143.2 (2019): e20181056."

P: 2009年から2014年の間に米国の救急外来を受診した0歳から17歳までの小児患者
E: 全米病院外来医療調査のデータを用い、抗菌薬の種類・最終診断・救急外来の種類 (小児救急外来もしくは非小児救急外来)のデータを抽出
C: なし
O: 救急外来で抗菌薬が処方された頻度

※小児救急外来は0歳-17歳までの患者の受診が全体の75%を超える救急外来と定義され、それ未満の救急外来が非小児救急外来と定義された。

結果のまとめ

・毎年平均で2,900万回の小児患者の受診があり、そのうち14% (95% confidence interval [以下95% CI] 10%-20%)が小児救急外来への受診だった。
・抗菌薬は小児救急外来より非小児救急外来で処方される頻度が高かった (24% vs 20%, P<0.01)。
・調査期間中の年ごとの抗菌薬処方頻度は変わらなかった。
・処方された抗菌薬のうち、44% (95% CI 42%-45%)は広域スペクトラムであり、32% (95% CI 30%-34%)は一般的な適応に沿ったものではなかった。
・小児救急外来と比較して非小児救急外来ではマクロライド系の処方頻度が多く (18% vs 8%, P<0.0001)、ガイドラインに基づいた第一選択薬の処方頻度は低かった (77% vs 87%, P<0.001)。
・筆者らは、救急外来を受診した小児患者は抗菌薬を年間で700万回近く処方されており、その大半は非小児救急外来で処方されていることを示した。小児の抗菌薬適正使用が非小児救急外来でも強化されることが、適応がない抗菌薬の不使用、マクロライド系抗菌薬の処方頻度の軽減、ガイドラインに基づいた第一選択薬の処方につながると結論づけている。

原文へのリンク

Toshiyuki Tanaka Written by:

高校時代に渡米、ニューイングランドの寄宿舎で高校生活を送る。大学はコネチカットのリベラルアーツカレッジで経済学を専攻する。卒後はインターンなどを経て、ボストンの大学院で公衆衛生を学ぶ。東南アジアで国際保健のプロジェクトに携わった後、日本に戻り医学部に編入学する。後期研修より小児科医としての研鑽を積む。現在は小児科オンラインの運営に携わる。