陣痛促進・人工破膜と緊急帝王切開

【OBGYN. Feb 2020】

Girault, Aude, et al. "Association of Oxytocin Use and Artificial Rupture of Membranes With Cesarean Delivery in France." Obstetrics & Gynecology 135.2 (2020): 436-443.

P: フランスで出産した16,527名の正期産妊婦 (自然陣痛発来後の単胎頭位分娩に限り、2010年と2016年のFrench National surveysデータ [国内の99%の分娩データが登録]を用いたpopulation-basedな横断研究。)
E: 2010年時点での分娩症例 (9,012名)
C: 2016年時点での分娩症例 (7,515名)
O: 分娩中の緊急帝王切開実施率

*背景:1980年代から分娩中の陣痛促進剤 (オキシトシン)の投与や人工破膜 (用手的に子宮口内側の羊膜を破る手技)の実施が分娩時間を短縮すると考えられていたが、帝王切開率を減少させる効果があるかどうかははっきりしていなかった。これを踏まえ、2003年以降、医学的適応のない陣痛促進剤投与や人工破膜は慎むべきだと推奨するガイドラインが各国から出されてきた。

結果のまとめ

・患者背景として、2010年に比べて2016年では母体年齢の上昇、BMIの増加、分娩時の硬膜外麻酔使用の増加、帝王切開の既往を持つ者の増加が認められた。また、医療体制の背景として、2016年では公的病院や大規模病院での分娩が増加していた。
・2010年から2016年にかけて、陣痛促進剤投与率 (58.3%→45.2%, adjusted odds ratio [aOR] 0.51; 95% CI 0.47–0.55)や人工破膜実施率 (52.4%→42.6%, aOR 0.66; 95% CI 0.62–0.71)が減少していた (年齢、BMI、経産回数、分娩時妊娠週数、分娩時麻酔、医療機関特性などを調整)。
・分娩中の緊急帝王切開実施率に有意な変化は認められなかった (6.9%→6.6%, aOR 0.93; 95% CI 0.82–1.06)。
・これらの結果は、低リスクの初産婦群、低リスクの経産婦群、帝王切開術の既往があり今回経腟分娩群のいずれでも同様であった。
・著者らは、本研究において陣痛促進剤投与率や人工破膜実施率が近年減少傾向にあることは分娩時の緊急帝王切開率の上昇に結びついておらず、適切な科学的根拠に基づく医療介入の必要性を支持する結果だったと結論づけている。

原文へのリンク

Daisuke Shigemi Written by:

産婦人科専門医、公衆衛生学修士。 株式会社Kids Publicの産婦人科医師統括部として産婦人科オンラインの運営に携わっている。また、東京大学大学院の博士課程に在籍しながら産科病院での臨床にも従事している。 初期研修を日本赤十字社医療センターで行い、3年目に日本医科大学産婦人科学教室に入局。卒後8年目に退局。