母体重症合併症と産後の精神疾患発症

【OBGYN. Oct 2019】

Lewkowitz, Adam K., et al. "Association between severe maternal morbidity and psychiatric illness within 1 year of hospital discharge after delivery." Obstetrics & Gynecology 134.4 (2019): 695-707.

P: 2005-2014年に単胎の生児を初めて出産した13-54歳の女性 (米国フロリダ州の急性期診療データベースより抽出)
E: 分娩目的で入院中に母体の重症合併症に罹患した女性 (15,510名)
C: 母体の重症合併症に罹患しなかった女性 (1,178,458名)
O: 産後一年以内の精神疾患発症

結果のまとめ

・暴露である「母体の重症合併症」はCenters for Disease Control and Prevention (CDC)が定義している疾患群とした (羊水塞栓症、子癇発作、敗血症、急性心不全、急性呼吸窮迫症候群、輸血、人工呼吸管理など21項目)。
・主要アウトカムである「精神疾患」には自殺企図、うつ病、不安症、心的外傷後ストレス障害、精神病、急性ストレス障害、適応障害を含めた。
・多変量解析では年齢、人種、医療保険の種類、その他の母体合併症を調整した。
・主要アウトカムの発生率は、暴露群で2.9%、 コントロール群で1.6%であり、有意に暴露群での発症率が高かった (adjusted odds ratio 1.74, 95% confidence interval [CI] 1.58-1.91)。
・主要アウトカムの発生が最も多い時期は産後4ヶ月以内だった (adjusted hazard ratio 2.53, 95% CI 2.05-3.12)。
・著者らは、本研究結果から、全ての女性 (コントロール群でも稀ではない頻度で精神疾患を発症していたため) にメンタルヘルスを含めたさらなる心理社会的サポートが提供されるべきで、特に分娩時の重症合併症を経験した産後4ヶ月以内の女性にはそれが望まれる、と結論づけている。

原文へのリンク

Daisuke Shigemi Written by:

産婦人科専門医、公衆衛生学修士。 株式会社Kids Publicの産婦人科医師統括部として産婦人科オンラインの運営に携わっている。また、東京大学大学院の博士課程に在籍しながら産科病院での臨床にも従事している。 初期研修を日本赤十字社医療センターで行い、3年目に日本医科大学産婦人科学教室に入局。卒後8年目に退局。