乳児の侵襲性細菌感染予測モデル

【PEDIATRICS. July 2019】

Aronson, Paul L., et al. "A Prediction Model to Identify Febrile Infants≤ 60 Days at Low Risk of Invasive Bacterial Infection." Pediatrics (2019): e20183604.

P: 38度以上の発熱があり見かけ上ぐったりしていない生後60日以内の乳児 (2011年7月から2016年6月、米国内11ヶ所の小児病院の救急外来受診患者)
E: 侵襲性細菌感染 (細菌検査により診断された菌血症または細菌性髄膜炎)の乳児 (疾患群)
C: 侵襲性細菌感染でない乳児 (対照群: 病院と受診日で疾患群と1:2でマッチングさせた)
O: 侵襲性細菌感染を予測モデルの作成

結果のまとめ

・5年間にわたる11施設での本研究では侵襲性細菌感染の乳児は394名であり、そのうち181名が疾患群 (155名が菌血症のみ、26名が細菌性髄膜炎と菌血症)だった。362名の対照患者がマッチングされた (対照群)。
・疾患群の23名 (12.7%)、対照群の138名 (38.1%)が救急外来では38度以上の発熱を認めなかった (自宅もしくはクリニックでは38度以上の発熱があった)。
・侵襲性細菌感染と有意に関連していた予測因子は4つだった: 年齢、救急外来での最高体温、尿所見異常、好中球数 (area under the curve 0.83 [95% confidence interval [CI]: 0.79-0.86])

・これらの予測因子を調整オッズ比を基にスコア化して0-10点の予測モデルを作成した (生後21日未満 [1ポイント]、救急外来での最高体温が38.0-38.4度 [2ポイント]、38.5度以上 [4ポイント]、好中球数が5,185/μL以上 [2ポイント]、尿所見異常がある場合 [3ポイント])。本モデルにおいて、合計スコアが2ポイント以上であることの侵襲性細菌感染に対する感度は98.8% (95% CI: 95.8-99.9%)、特異度は31.3% (95% CI: 26.3-36.6%)だった。
・著者らは、生後60日以内の乳児の発熱 (救急外来で38度未満である場合)において、尿所見異常がなく好中球数が5,185/μL未満であれば侵襲性細菌感染である確率は低いと結論づけている。

原文へのリンク

Toshiyuki Tanaka Written by:

高校時代に渡米、ニューイングランドの寄宿舎で高校生活を送る。大学はコネチカットのリベラルアーツカレッジで経済学を専攻する。卒後はインターンなどを経て、ボストンの大学院で公衆衛生を学ぶ。東南アジアで国際保健のプロジェクトに携わった後、日本に戻り医学部に編入学する。後期研修より小児科医としての研鑽を積む。現在は小児科オンラインの運営に携わる。