初産・経産婦の分娩進行速度の再評価

【AJOG. Mar 2020】

Ashwal, Eran, et al. "Contemporary patterns of labor in nulliparous and multiparous women." American Journal of Obstetrics and Gynecology 222.3 (2020): 267-e1. 

P: イスラエルで2011年から2016年に出産した初産婦35,146名 (妊娠37週から42週の頭位単胎分娩のみ)
E: 初産婦15,948名
C: 経産婦19,198名
O: 分娩進行速度 (子宮口開大度のデータを電子カルテから抽出し後方視的に分析)

結果のまとめ

・入院時の平均子宮口開大度は4cmで初産婦と経産婦に有意差は認めなかった。
・分娩第一期の平均所要時間は初産婦で中央値274分 (四分位範囲 145-441分)、経産婦で中央値133分 (四分位範囲 56-244分)と経産婦で短時間だった。
・潜伏期 (子宮口4cm未満)で入院した場合、分娩第二期までの時間は初産婦で120-140分長かった。
・潜伏期では、初産婦と経産婦での分娩進行速度に差を認めなかったが、子宮口5cm以降での分娩進行は経産婦で早かった。
・無痛分娩 (硬膜外麻酔)では、両群とも分娩第一期と第二期の経過時間が延長した。
・著者らは、潜伏期の場合は初産婦も経産婦でも分娩進行速度に大きな差が認められなかったこと、また分娩第一期の経過時間は以前から言われていたほど短くなかったことを考えると、現代におけるより適切な分娩進行評価によって不要な医学的介入を減らすことが可能になるのではないかと提案している。

原文へのリンク

Ayako Shibata Written by:

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医。 2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 著者:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、総合医療雑誌J-COSMO編集委員。