妊娠中の労働形態と周産期リスク

【AJOG. Dec 2019】

Chenxi Cai, PhD; Ben Vandermeer, MSc. et al. The impact of occupational shift work and working hours during pregnancy on health outcomes: a systematic review and meta-analysis Am J Obstet Gynecol. 2019 Dec;221(6):563-576

P: 妊娠中に報酬 (給料)のある勤務を行っている妊婦 (2019年3月15日時点で公表されている33カ国、59個の観察研究を含んだメタアナリシス)
E: 標準的な労働形態 (朝8時から夕方6時の中での固定勤務または週40時間以下の勤務)以外の妊婦群
– シフト制勤務:勤務時間が勤務表に従って変わる形態
– 固定夜勤:夜11時から翌朝11時まで
– 長時間勤務:週40時間以上

C: 標準的な労働形態の妊婦群
O: 早産 (妊娠37週未満の出産)、低出生体重児、small for gestational age [SGA] (出生時の標準体重の10%タイル未満)、流産、死産、妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症、子宮内胎児発育不全、妊娠糖尿病

結果のまとめ

・早産について
– シフト制勤務、固定夜勤、長時間勤務ではいずれもリスクが高かった (それぞれodds ratio [以下OR]: 1.13; 95% confidence interval [以下CI]: 1.00-1.28, OR: 1.21; 95% CI: 1.03-1.42, OR: 1.21; 95% CI: 1.11-1.33)
– 週40時間の勤務と比較して、週55.5時間以上勤務した妊婦では、早産のオッズ比が10%上昇した。
・流産について
– シフト制勤務では有意な関係性を認めなかった
– 固定夜勤と長時間勤務でリスクが高かった (それぞれOR: 1.23; 95% CI: 1.03-1.47, OR: 1.38; 95% CI: 1.08-1.77)
・死産について
-シフト制勤務や固定夜勤では有意な関連を認めなかった
・妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧症候群について
-シフト制勤務でリスクが高かった (それぞれOR: 1.19; 95% CI: 1.10-1.29, OR: 1.75; 95% CI: 1.01-3.01)
-固定夜勤や長時間勤務と妊娠高血圧腎症や妊娠高血圧症候群との有意な関連を認めなかった
・SGA
-シフト制勤務と長時間勤務でリスクが高かった (OR: 1.18; 95% CI: 1.01-1.38, OR: 1.16; 95% CI: 1.00-1.36)
-固定夜勤では有意な関連を認めなかった
・低出生体重児
-シフト制勤務や固定夜勤では有意な関連を認めなかった
-長時間勤務でリスクが高かった (OR: 1.43; 95% CI: 1.11-1.84)
・著者らは、シフト制勤務、固定夜勤、長時間勤務に従事する妊婦において母児の健康状態が悪化するリスクが高くなる可能性を踏まえ、妊娠予後悪化を防ぐための職業上の指示や職場環境調整に関する意思決定に役立つだろう、と結論づけている。

原文へのリンク

Ayako Shibata Written by:

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医。 2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 著者:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、総合医療雑誌J-COSMO編集委員。