母による乳児の安全な睡眠環境の遵守

【PEDIATRICS. Nov 2019】

Hirai, Ashley H., et al. "Prevalence and factors associated with safe infant sleep practices." Pediatrics 144.5 (2019): e20183955.

P: 産後2-9ヶ月の間に2016年度版PRAMS (Pregnancy Risk Assessment Monitoring System)の乳児の睡眠に関する調査に回答した母親
E: PRAMSデータより乳児の安全な睡眠に関する4項目の回答結果を抽出: (1) 仰臥位で寝ているか、(2) 推奨された寝具で一人で寝ているか、(3) 保護者と同じ部屋で別の寝具で寝ているか、(4) 寝る場所の環境はどうか (柔らかい寝具や寝具の上に毛布やクッションなどが置かれていないか)
C: なし
O: 乳児の安全な睡眠 (上記4項目それぞれを遵守できているか)

※PRAMS: CDC (アメリカ疾病予防管理センター)と参加する州の保健局による、女性を対象とした妊娠前後に起こる体験に対する行動や心理的状況を調査するプロジェクト。今回の研究では対象となった39州のうち29州がCDCの定める回答率の基準 (55%)を満たしていた。

結果のまとめ

・比較的多くの母親が乳児を仰臥位で寝かせており (78.0%)、半数以上の母親が保護者と同じ部屋で乳児を別の寝具で寝かせていた (57.1%)。柔らかい寝具を避けている母親は半数以下 (42.4%)で、推奨された寝具で寝かせている割合はさらに低かった (31.8%)。
・医療者からの乳児の睡眠に関するアドバイスは「仰臥位に寝かせる」が最も多く (92.6%)、「保護者と同じ部屋で別の寝具で寝かせる」が最も低かった (48.8%)。
・乳児の安全な睡眠に対して、母親の年齢、人種、教育レベルなどのsociodemographicな因子、母乳栄養や母親の喫煙といったbehavioralな因子、妊婦健診の導入時期や加入している保険の種類などの医療的な因子は (医療者からの睡眠アドバイスと比べて)、乳児の安全な睡眠に対する母親の行動にばらつきを認めた。これらの因子や医療者からのアドバイスは乳児の安全な睡眠環境の遵守に一定の影響を与えていた。
・医療者からの乳児の睡眠に関するアドバイスが多いほど、母親は乳児の安全な睡眠を遵守していることがわかった。
・著者らは、乳児を「仰臥位で寝かせる」以外の母親による乳児の安全な睡眠の実践はまだ十分に遵守されていないと述べており、医療者による乳児の睡眠に関するアドバイスは母親の行動に影響する重要な因子であると結論づけている。

原文へのリンク

Toshiyuki Tanaka Written by:

高校時代に渡米、ニューイングランドの寄宿舎で高校生活を送る。大学はコネチカットのリベラルアーツカレッジで経済学を専攻する。卒後はインターンなどを経て、ボストンの大学院で公衆衛生を学ぶ。東南アジアで国際保健のプロジェクトに携わった後、日本に戻り医学部に編入学する。後期研修より小児科医としての研鑽を積む。現在は小児科オンラインの運営に携わる。