州法改正後の園児の予防接種遵守率

【PEDIATRICS. June 2019】

Delamater, Paul L., et al. "Elimination of Nonmedical Immunization Exemptions in California and School-Entry Vaccine Status." Pediatrics 143.6 (2019): e20183301.

P: カリフォルニア州の幼稚園に入園した園児 (カリフォルニア州や群の保健局における園児の予防接種に関する2000年台の公開データを用いた研究)
E: Senate bill 277 (後述、以下SB277)の施行後
C: SB277の施行前
O: 入園時にスケジュール通りに予防接種を受けていない園児の割合

※SB277:幼稚園に入園する際は、医学的理由がなければ予防接種を義務づけるカリフォルニアの州法。施行以前は予防接種をスケジュール通りに受けていない場合の入園は「保護者の信条を理由とした予防接種の免除」、「医学的理由に基づく免除」、「条件付き入園 (予防接種は受けているが完遂していないなど)」の3種類が認められていたが、SB277により「保護者の信条を理由とした免除」が除外された。

結果のまとめ

・SB277の施行前はスケジュール通りに予防接種を受けていない園児の割合は経時的に緩徐な増加を認めた。増加理由の内訳は保護者の信条と医学的理由による免除だった。
・SB277が施行された年にスケジュール通りに予防接種を受けていない園児の割合は前年の7.15%から4.42%に減少を認め、その理由としては同時期に条件付き (一部のみ接種)で入園した園児の割合が4.43%から1.91%に減少した影響を受けた。
・SB277が施行された翌年はスケジュール通りに予防接種を受けていない園児は0.45%の増加を認めた。同時期に条件付きで入園した園児や保護者の信条による非接種園児の割合は減少したが、代わりに家庭ベースの私立園やクラスがない園などに通う園児が増えた (SB277の範疇には入らない)。
・筆者らは、SB277施行後は入園時にスケジュール通りに予防接種をうけている園児は一時は増加を認めたが、「保護者の信条を理由とした免除」を禁じただけでは、法の抜け道を使うことによりスケジュール通りに予防接種を完遂する園児を増やすことは困難なのではないかと述べている。

原文へのリンク

Toshiyuki Tanaka Written by:

高校時代に渡米、ニューイングランドの寄宿舎で高校生活を送る。大学はコネチカットのリベラルアーツカレッジで経済学を専攻する。卒後はインターンなどを経て、ボストンの大学院で公衆衛生を学ぶ。東南アジアで国際保健のプロジェクトに携わった後、日本に戻り医学部に編入学する。後期研修より小児科医としての研鑽を積む。現在は小児科オンラインの運営に携わる。