スマホで子どもの中耳炎を診断

【医療×ICT. May 2019】

Chan, Justin, et al. "Detecting middle ear fluid using smartphones.".Science translational medicine 11.492 (2019): eaav1102.

P:米国シアトルこども病院で耳鼻科手術予定の患児の98の耳 (18ヶ月-17歳)
E: スマートフォンを用いて得られたデータを元にした機械学習アルゴリズムの使用
C: 市販されている専用の装置を必要とする音響反射率計の使用
O: 中耳の液体貯留検出

結果のまとめ

・98の耳のうち、手術中に中耳からの液体流出があった場合 (N=24)と鼓膜に発赤と膨隆があった場合(N=2)を「液体貯留あり」とし、手術中に中耳からの液体流出がなかった場合 (N=24)、もしくは、鼓膜チューブの挿入がなされなかった場合や耳症状がなく、耳鼻科医による空気圧耳鏡検査で液体貯留なしと判断された場合 (N=48)を「液体貯留なし」とした。
・スマートフォンに付けた紙製の漏斗を耳に挿入し、スピーカーより小さな音を出し反響した音をマイクで集音し、解析することで液体貯留の有無を検出した。
・得られたデータを元にした液体貯留の有無の判断モデルは、機械学習によって作成し、モデルの精度を高めるためにleave-one-out 交差検証を用いた。
・今回のスマートフォンを用いた判断モデルのarea under curve (以下 AUC)は0.898、感度84.6% (95% confidence interval [以下、95% CI] 65.1-95.6%)、特異度81.9% (95% CI 71.1-90.0%)であった。 一方市販されている専用の装置を必要とする音響反射率計では、AUC 0.776であった。
・iPhone、Samsung Galaxy、Google Pixelと異なるメーカーのスマートフォンを用いても、同様の結果が得られた。
・今回の対象者とは別の患児の25の耳で試したところ、保護者が測定を行なった場合も、医師が行なった場合とほぼ同様の結果が得られた。
・筆者らは今回の結果は、中耳の液体貯留のより簡易かつ効果的なスクリーニングにおいてスマートフォンが有用である可能性を示唆していると述べている。

原文へのリンク

Naoya Hashimoto Written by:

小児科医、公衆衛生修士、株式会社Kids Public 代表取締役。2009年 日本大学医学部卒。聖路加国際病院にて初期研修。国立成育医療研究センターにて小児科研修。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 修士課程修了。