米国遠隔診療における小児抗菌薬処方

【PEDIATRICS. May 2019】

Ray, Kristin N., et al. "Antibiotic Prescribing During Pediatric Direct-to-Consumer Telemedicine Visits." Pediatrics 143.5 (2019): e20182491.

P: 遠隔診療を含めた外来にて急性上気道炎と診断された0-17歳の小児 (2015-2016年の米国内の商業健康保険データを用いた後ろ向きコホート研究)
E: 遠隔診療 (本研究ではdirect to consumer型: メディカルホーム外で患者が医師から診療をうける)、アージェントケア、かかりつけ医といった異なる施設間での急性上気道炎に対する抗菌薬処方の比較
C: なし
O: 急性上気道炎に対する抗菌薬の処方率、抗菌薬の適正使用ガイドラインに基づく処方率

※メディカルホーム:多職種連携による包括的なプライマリーケアを提供するためのアプローチ。個々の患者とそのかかりつけ医、家族も含めた協力関係を促進するモデル。
※アージェントケア:予約なしで、軽症・中等度の症状に対応する。ER (救急救命室)より医療費は安い。

結果のまとめ

・本研究では急性上気道炎と診断された小児の内訳は遠隔診療では5,431人、アージェントケアでは87,555人、かかりつけ医では1,132,116人だった。
・上記対象者を年齢、性別、慢性疾患などでマッチさせた上で、急性上気道炎と診断された小児の内訳は遠隔診療では4,604人、アージェントケアでは38,408人、かかりつけ医では485,201人だった。
・抗菌薬の処方率は、遠隔診療がアージェントケア、かかりつけ医と比較して最も高かった (順に52%, 42%, 31%; p<0.001)。
・抗菌薬の適正使用ガイドラインに基づいた処方率は、遠隔診療がアージェントケア、かかりつけ医と比較して最も低かった (順に59%, 67%, 78%; p<0.001)。
・筆者らは、direct to consumer型の遠隔診療では急性上気道炎と診断された小児は抗菌薬が処方されやすく、抗菌薬の適正使用ガイドラインの遵守率は低くなりやすかったと結論づけている。

原文へのリンク

Toshiyuki Tanaka Written by:

高校時代に渡米、ニューイングランドの寄宿舎で高校生活を送る。大学はコネチカットのリベラルアーツカレッジで経済学を専攻する。卒後はインターンなどを経て、ボストンの大学院で公衆衛生を学ぶ。東南アジアで国際保健のプロジェクトに携わった後、日本に戻り医学部に編入学する。後期研修より小児科医としての研鑽を積む。現在は小児科オンラインの運営に携わる。