学校を活かした小児喘息遠隔医療

【医療×ICT. Mar 2018】

Halterman, Jill S., et al. "Effect of the school-based telemedicine enhanced asthma management (SB-TEAM) program on asthma morbidity: A randomized clinical trial." JAMA pediatrics 172.3 (2018): e174938-e174938.

P: ニューヨーク州ローチェスターの都市部の学校 (合計49校)に通う3-10歳の持続型の気管支喘息患者 (2012-2016年の学期始めに参加し、それぞれ1年間観察)
E: 学校における3回の遠隔医療による受診
C: プライマリケア医師による従来の外来管理
O: 2週間ごとの無症状日数

結果のまとめ

・介入群と対照群はランダム割付された。結果の評価は盲検化した上で行われた。
・400名が参加し、平均年齢は7.8 (標準偏差 1.7)歳だった。
・遠隔医療による受診では、アシスタントが学校に遠隔医療用のモバイル装置を持参して患児と面談し、症状や誘因などの情報、呼吸音などを含む身体所見を入力、アップロードした。遠隔医療担当医師はその3日以内にその記録を確認、もしくは、リアルタイムのビデオ通話によって患児の状態を把握した。その上で音声通話もしくはビデオ通話によって遠隔医療担当医師が保護者に連絡し、治療プランの作成、教育や紹介を行った。
・介入群の200名のうち196名 (98.0%)が1回以上の遠隔医療による受診を行い、108名 (54.0%)が3回全ての遠隔医療による受診を行った。遠隔による受診をきっかけとして、165名 (82.5%)がdirectly observed therapy (管理者が立ち会った上で投薬する方法)を開始した。
・介入群の方が対照群に比べ、2週間ごとの無症状日数が有意に長かった。 (11.6 vs 10.97日, 日数差として0.69日, 95% confidence interval [以下95% CI] 0.15-1.22, P=.01)
・介入群の方が対照群に比べ、救急外来受診もしくは入院の事象が有意に少なかった。 (7% vs 15%, odds ratio 0.52, 95%CI 0.32-0.84)
・筆者らは、学童期の喘息患者の管理において学校という接点を活かした遠隔医療は有効であったと述べ、将来的にはモデルケースとしてより広く行われ、健康格差の是正に貢献することが期待されると述べている。

原文へのリンク

Naoya Hashimoto Written by:

小児科医、公衆衛生修士、株式会社Kids Public 代表取締役。2009年 日本大学医学部卒。聖路加国際病院にて初期研修。国立成育医療研究センターにて小児科研修。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 修士課程修了。