妊娠高血圧腎症の長期認知障害

【OBGYN. Aug 2018】

Elharram, Malik, et al. "Long-Term Cognitive Impairment After Preeclampsia: A Systematic Review and Meta-analysis." Obstetrics & Gynecology 132.2 (2018): 355-364.

P: Inclusion criteriaに合致した13本の観察研究 (20178月までの文献が含まれ、1,314名の妊娠高血圧腎症妊婦と289,080名の正常血圧妊婦が対象)
E: 妊娠高血圧腎症 (子癇発作を除く)を発症した妊婦 (暴露群)
C: 妊娠高血圧腎症を発症しなかった妊婦 (対照群)
O: 出産後の自身の認知関連機能 (主観的評価、客観的評価、画像評価、認知症診断)

結果のまとめ

・アウトカム評価時期の中央値は出産後6年だった。
13本の研究のうち、7本では神経認知テストを用いた認知機能を、4本ではMRIを用いた画像評価を、3本では認知症の臨床診断を評価項目としていた。神経認知テストを利用した7本の試験のうち、4本の試験では同じ評価テストを用いていたため、これらの結果は統合して評価可能だった。
・主観的評価: Cognitive Failure Questionnaireを使用した知覚、記憶、運動機能の障害に関する自己記入式評価では、暴露群において有意に低評価な割合が高かった (平均点 41.5 vs 36.8点 [100点満点中], 平均差–5.1点 [–9.4 – –0.8点])。
・客観的評価: 注意力に関する評価において両群に有意な差は認められなかった。しかしながら、2本の記憶力の評価研究のうち、1本は暴露群で有意に低評価な割合が高かった (平均点 10.6 vs 10.1点 [21点満点中], 平均差 –0.63点 [0.06 – 1.2点])。
・認知機能に関する画像評価 (MRIなど)や認知症の臨床診断では、各試験の多様性により一つの結果を導くことができなかった。
・出版バイアスは、含まれた研究が少数のため正確に評価できなかった。
・筆者らは、本研究で、妊娠高血圧腎症が主観的認知機能障害のわずかな悪化と関連していた一方で、客観的な神経認知テストの悪化に影響しているという明確な根拠は示せなかったと結論づけている。同時に、心血管系疾患スクリーニングに加えて神経認知機能評価も長期的に行うべきかどうか、さらなる研究が必要だとコメントしている。

原文へのリンク

Daisuke Shigemi Written by:

産婦人科専門医、公衆衛生学修士。 株式会社Kids Publicの産婦人科医師統括部として産婦人科オンラインの運営に携わっている。また、東京大学大学院の博士課程に在籍しながら産科病院での臨床にも従事している。 初期研修を日本赤十字社医療センターで行い、3年目に日本医科大学産婦人科学教室に入局。卒後8年目に退局。